『Planets in Milky-way』 by 木曽ラト

『Planets in Milky-way』
木曽ラト

 平和に満ちし星系ありけり。住みけるは、温室で生まれ育ち、戦いを忘れた人々。穏やかなる、発展も衰退も無き生活を送りし不死の民。
 彼ら彼女らが暮らすは、三つの小さな惑星。地上に生物無き闇色の惑星。もっとも新しく開発されけり、然るにもっとも洗練されける第一惑星。夜に闇無き金色の惑星。思慮無く理性無き者の住みけり、然るに平穏なる第二惑星。そして空に酸素無き紅の惑星。最大の人口を擁しけり、然るに生産力に劣りける第三惑星。三惑星は、永遠に黄色く温かな星を周り続けるかに見えけり。
 
 然るに。
 破れるが、平和の定。続かぬが、久遠の掟。
 第一惑星の周囲を廻りし農業衛星群。第二惑星に行くべきを、第三惑星が奪いしその余剰生産物。第三惑星が得られしは、然るに余剰の半分に過ぎない。
 半分を手に入れしは、天の川の向こうより訪れし褐色の〈絶望〉。〈絶望〉に襲わるる農業衛星。軌道を離れ、虚空に消ゆ。
 生産物の消費に忙しき第三惑星。褐色の〈絶望〉に未だ気づいてはいない。然るに第一、第二両惑星は、〈絶望〉からの逃避行のただなかにあり。軌道を変えたる黒の惑星、黄金の惑星。真空を翔りし褐色の〈絶望〉。
 絶望に、追われしは、第一惑星。
 絶望に、立ち向かいしは、第三惑星。
 軌道改変により、第三惑星も〈絶望〉に気づきたり。動機は何くに。定かではなし。然るに危地にありき同胞を、見捨てはせぬ。闇の色した惑星を、救えるや。深紅の艦隊、真空を切り開く。交錯する、赤と茶と。
 弾かれたりは、紅き船団。虚空に跳び、然るにかろうじて踏みとどみたり。乾燥せり紅き惑星は、重力の底に落ちかかりしが、然るに危うき処で軌道に乗りぬ。極冠に、ありし氷は失せたり。海が生じたり。
 軌道に乗りし紅き惑星、黒き惑星と煌めき惑星とに合流せり。
 三惑星は団結せり。
 諍い合いし三惑星。平和に慣れし三惑星。かような惑星、今や無し。奮わせしは、勇猛なる赤き艦。呼び起こせしは、青き海を纏い、金色の光に照らされし紅の星。
 甦りし、災いの星々。戦乱を、究め尽くしたる人々。死と破壊を除いては、何も残らぬ、何も残さぬ星系。
 団結せし三惑星。止められるは、何者や。
 褐色の〈絶望〉なり。
 三惑星の連合が、敵いもせず、褐色の〈絶望〉。蹴散らされし軍団、跳ね返されし兵器。取りうる手段は、逃亡のみ。
 逃げたるは三惑星、追いたるは〈絶望〉。
 禍々しき〈絶望〉の、踏みたるは、第四の惑星。水素を纏いし巨大なる惑星。
 煌めきたり、爆ぜたり。烈々と輝き、轟々と燃え、磊々と崩れたる、青白き惑星。塵芥の如くに、飛び去り若しくは落ちたる核。系内を貫きたり、銀河に拡がりたる、光。
 光に射られたる〈絶望〉。破壊されたる〈絶望〉。逃げ去りたる〈絶望〉。
 光に味方せらるる三惑星。傷つくも生き残りし三惑星。勝利せる三惑星。

 勝鬨を上げたりし三惑星。そこに訪れしは、巨きなる船。三惑星に住みし者どもの、母たりける船。迎えに来たりしや、叱責に来たりしか。
 真っ先に、船に乗りたるは、紅き惑星。黒き惑星、金色の惑星、それに続きたり。母なる船、星を運びぬ。
 船は前みき。何くにか、行かん。
 天之川を、貫きぬ。止まらず、動きたり。

 そして帰りしや、三惑星。出会いしは、始祖なる惑星、その今の姿。落ちぶれし人造の惑星。水に満ち、水にのみ富む、遺物たれる存在。
 否定せる三惑星。汝に始祖たる資格なし。唯落ちぶれるのみが似合いたり。
 船に乗り、飛び立たん。然るに客ではあらず。貨物たれり。三惑星は、驕らず。
 何こに行きたるや。何れにもたらしたるや。
 災厄を。戦乱を。

(更新者:西崎)
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『そして目的は果たされず』 by 楼堂舎

『そして目的は果たされず』
楼堂舎 
 
 ピンク髪の少女が、洞窟の中でたき火にあたっている。
「うふふ……二人ともかわいい寝顔だね」
 彼女――モモコは眠る仲間へ柔らかくつぶやいた。歩き疲れてへとへとなのは、モモコも同じだ。しかし自分まで眠りに落ちてはいけない。
 ここは北海道の某山系、熊が多数出没すると噂される地である。風は寒く、空は常にどんよりと曇っている。人の訪れをかたくなに拒むような空気が、この場所にはある。
 だが、それでも目的は果たさなければならない。モモコたちの山中生活は、すでに三日目になろうとしていた。
「どうしてあたしたちが、こんなことしないといけないのかな……?」
 暖かな言葉とは裏腹に、顔はさびしい微笑みを浮かべている。これから生き物をあやめなければならないという現実が、モモコの心を沈ませる。
「ねえ、カネコ……あなた、熊が大好きだったよね」
 むにゃむにゃと何事か寝言をつぶやいている金髪少女の頬へ、モモコはそっと手を伸ばす。とたんに口が開いて、かぷり、とモモコの指をくわえこんだ。
「くまー」
「あっ……ちょっと、放してよ」
 かすかな快感に襲われ、あわてて手を引っこめる。金髪少女――カネコの口から抜き取った指先には、ほんのりと彼女の唾液が付着していた。
「もう、カネコったら……クロコも、カネコに言ってあげてよ、ねえ」
 モモコは黒髪の少女のもとへと向かう。眼鏡をかけた三つ編みの彼女――クロコは、見た目にたがわず聡明で理知的、モモコも大いに頼りにしていた。
 そんな彼女の寝顔は、普段のきりりとした表情からかけ離れている分、かえって愛らしくモモコの心をときめかせてくれる。
「クロコは怖くないの……クマゴリラさん、殺しちゃっても心が痛まないの……?」
 近づいてきたモモコの頬に、ビンタが飛んだ。
「痛っ……クロコ、寝相悪いよ……」
 軽く四、五メートルは吹っ飛びながらも、モモコはクロコがまだ元気であることに安心している様子であった。

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 翌日はこの山にはめずらしく、さんさんと太陽の照りつける暑い日だった。
「よーし、今度こそにっくきクマゴリラをぶっ潰してやるわよー!」
 昨夜の消沈ぶりなどどこ吹く風で、モモコは元気いっぱいに叫んだ。
「ほら、カネコ! あんたが熊好きなのは知ってるけど、好きの気持ちだけじゃ仕事はできないの。偉い人から命令があったらそれに従う、たとえ好きなものでもぶち倒す! そこんとこわかってる? わかってないと生き残れないんだから!」
「くまー」
 テンションの変わらないカネコの声が、明るく響くモモコの声に応じる。
「クロコも、後方支援しっかりやってちょうだいね。あんたの作る爆弾はいつでもどこでも一撃必殺、どんな凶悪動物も粉みじんに吹き飛ばせるんだから」
「くっくっ……わかってますよ。私が出て行けばクマゴリラなど」
 眼鏡を光らせながら、クロコはにやりと微笑む。彼女の表情にゆがんだ悪意があるのは明らかだったが、モモコはそれを単なる彼女の個性としかとらえていない。
 そんな三人の前に、この日、いきなり最終目的となる動物が姿を現した。当然モモコは驚き、歓喜し、即座に戦闘体勢へ移行する。
「あーっ、熊だ! クロコ、早くバナナを!」
「くく……了解です」
 クロコがリュックサックからバナナを取り出し、すでに二本足で立ち上がった熊へと投げつける。熊の目の色が変わり、両腕をまっすぐ前方へと伸ばし――
「バナナはあたしのもんだーっ!」
 モモコにとってもバナナは貴重品であった。すでに三日三晩、標的を探し続けて疲弊しきった肉体は、たとえ敵を陥れるための罠だったとしても、この栄養満点の果物を求めずにはいられなかったのだ。
 熊とモモコ、逆方向から同時に加えられた力の影響で、バナナが二つにちぎれて飛ぶ。両者はあたかも生き別れた双子の兄妹のごとく、無心で甘味にむしゃぶりついた。
「うっめ! やっべこれ超うんめっ!」
「くまー」
「やれやれ……貴女は人並みの常識を備えているというのに、なぜそこまで愚かであろうとするのですか。あまつさえ畜生と大差のない次元に落ちるなど」
 クロコの辛辣な言葉を聞きとがめるかのように、バナナを飲みこんだ熊――いや、クマゴリラがのっそりと二本足で立ち上がる。彼こそは日本の警察が総力を結集しても打倒できなかった人類の敵、日本中のスーパーに並ぶバナナというバナナを食らいつくし、全国の家庭から朝のバナナダイエットに励む楽しみを掠奪せしめた張本人であった。
 その出現はまさに神出にして鬼没、どこにでも現れどこからでも消えうせる、まさにシュレーディンガーの猫のごとき人智を超えた不確定存在。ただバナナのみが彼をひきつけ、現実世界での実存を確かなものとする。
「おのれの正体を隠すことも考えない……所詮は野から生まれた獣ですね。私の地球破壊爆弾で華麗に葬ってさしあげましょう。さあ、もっと近くへ――」
「クロコに手を出すなーっ!」
 強靭なクマゴリラの片腕が、クロコではなく間に入ったモモコの身体を吹っ飛ばした。くるくると美しく輪を描いてどさりと地面に落ちるモモコのもとへ、カネコが無表情で近寄ってくる。そして、かぷり、とモモコの指をくわえこんだ。
「あっ……てカネコ、こんな時に何やってんじゃーっ!」
「くまー、くまー」
 元気よく身を起こしたモモコに、カネコは背後をしきりに指さして見せる。モモコが振り返ると、クロコがクマゴリラに追われながら近づいてくるところだった。
「よし、三人そろった! いよいよここからが反撃の機会ね。手をつないで、友情パワーでクマゴリラに立ち向かうのよっ!」
「くままー」
「そんなファンタジーが通用する相手とは思えませんが……まあいいでしょう」
 手をつないで、憎しみよりも愛を与えようとクマゴリラに向かっていく三人の少女。だが全国の小売店から憎しみを買っているクマゴリラは、そろそろ憎しみを売らないと自らのアイデンティティを崩壊させてしまう。ゆえに三人を拒絶した。
「ごへっ!」「くまぶっ」「仕方ない、甘んじて……だが!」
 三者三様に宙を舞い、木や地面や岩壁にたたきつけられる。もうおしまいかとモモコが思いかけた瞬間、クマゴリラはクロコの仕掛けた地球破壊爆弾を踏んだ。
 地球にひびが入り、熊の怪物は目を痛め、大地のひび割れの中へと消えていった。

ж

「お疲れ様です、皆さん。おかげで日本の小売店は守られました。具体的にはイOンとかサTィとかマIカルとかジャSコとか。あとついでに食卓も。ありがとう、ありがとう」
 警視庁からヘリコプターでお迎えが来て、三人はようやく山中生活から解放された。お迎えのお姉さんからたっぷりとお褒めの言葉を預かり、モモコは上機嫌だった。
「東京の汚れた空気がおいしいわねー。さ、これからも三人で退屈だけどささやかな平和を守っていきましょ。みんな、ずっと一緒だよ!」
「……そうは行きませんね」
「ん、どういうことクロコ?」
 そろって庁舎から出てきたところで、クロコの眼鏡が妖しく光った。
「明日から、カネコさんには任務を外れていただきます。今回のクマゴリラ討伐戦で何ら主体的な役割を果たしていない上、意思疎通に重大な困難がある点は特殊任務に携わる者として看過しがたい、と上層部より伝えられました」
「ちょっと、どうしてよ。今までだってあたしたち、あたしとカネコとクロコの三人とでずっと仲良くやってきたじゃない」
「お友達というだけで、カネコさんをごり押しで高給取りのお仕事にねじ込むのは感心できませんよ。友情とはそのように甘いものばかりではありません。今回の決定も、ずっと前から決まっていたことなのです。おとなしく認めてください」
 ぱちん、とクロコが指を鳴らすと、庁舎前に黒塗りのリムジンが停車した。中から四、五人の黒服が現れ、カネコを取り囲んで持ち上げ、トランクを開けて放りこむ。カネコは抵抗一つせず、なすがままだった。
「待って、待ってよ! なんでカネコがこんな、めちゃくちゃなことをされないといけないの? クロコも何とか言ってやりなさいよ、こんなのおかしいって!」
「くっくっ……私がそんな人間に見えますか?」
 うつむいたクロコの三つ編みがぶらんと揺れ、同時にリムジンが走り始める。モモコ、そしてクロコの無二の親友であるはずの少女をトランクに詰めこんだ無慈悲な車は、夜の大都会へと消えていった。
「『クロガネ・モモンガーズ』は、今日より『桃色クロニクルズ』として生まれ変わるのです。貴女と私、二人きりの華麗で瀟洒な戦闘集団としてね」
「クロコ……そんなの私、認めない! カネコのいないあたしたちなんて、あたしたちじゃない! もしカネコをひどい目にあわせるのなら、あんたはただの敵――」
 ぐらり、とモモコの身体がかしいだ。そのまま石段に倒れこもうとするところを、クロコはすばやく、優しく受け止めた。
「バナナに仕込んだお薬、やっと効いてきたみたいですね。さ、次の戦場へ向かいましょうか。私の愛しい王子様」
 クロコはモモコを抱え上げた。が、即座にその場から飛びすさった。
「あなたもしつこいですね……そんなに私が憎いですか」
 先ほどまでクロコの頭があった場所を、クマゴリラの鋭い爪が通過していた。もう片方の腕には、相変わらず低いテンションのままのカネコがしっかりと抱きかかえられている。リムジンの走り去った方角から、煙が上がっているのが見えた。
「くまー、くまー」
「どこにでもいて、どこからでも消えうせる……なるほど、あなたをしとめるにはもう少し工夫が必要なようですね」
 クロコの微笑みは、眠ったふりをしている時よりもなお妖しく輝いて、冷たくも美しく夜を彩っていた。眼鏡の奥で光る瞳が、よりいっそう鋭さを増す。
「くくく……モモコさん、かわいい寝顔ですよ」
 抱え上げた桃色の少女に語りかけると同時に、クロコは大地を蹴った。

(更新者:西崎)

『進め、前進せよ!』 by 只野胡椒

『進め、前進せよ!』
只野胡椒

 
 夏休みソビエト全土でピオネール(注:ソ連におけるボーイスカウト。成績優秀、品行方正の生徒しかメンバーになれない)のラーゲリ(注:キャンプのこと)が行われる。同じプーシュキン記念社会教育中学校に通うローザヴァ、ザラターヤ、チョールナ(順にピンク、ゴールド、黒)の三人は待ちに待ったラーゲリに胸が高鳴りながらも、全ソ少年少女の憧れの的であるピオネールの一員としての大きな責務に襟を正すのだった。
 ピオネール員であることを示す赤いネッカチーフを示すように誇らしげに胸を張って行進しながら、プーシュキン記念社会教育中学校のピオネールの子供たちは街の郊外の森に着いた。ここでラーゲリをするのである。彼ら彼女らは共に協力して雑草の生い茂る荒地を力強く開拓し、テントを立て、スープを作って肩を寄せて食事を取り、共に『ピオネールは木を植える』を歌った。三人も友人たちと楽しく時を過ごし、仲間との共同生活の素晴らしさを肌に感じるのだった。
 ある日、ピオネールのメンバーは森へとピクニックへと出掛けることとなったのだが、ローザヴァ、ザラターヤ、チョールナは皆とはぐれてしまったのだ。慌てて再合流しようとしたが、焦れば焦るほど道に迷ってしまい、とうとう洞窟で一泊することになってしまった。
 大きな不安に押し潰されそうになりながら冷たい地面に横たわったのだが、ローザヴァは少し離れて眠ることとなった。そもそもはぐれてしまったのはローチャ(ローザヴァの愛称)が遅れたのをふたりが待っていたのが原因だったからだ。仲間を困らせてしまった罪悪感にさいなまされつつ、それでもさびしさに人知れず涙を流すのだった。
 翌日、三人は森を歩いた。針葉樹の木々のざわめきと長く響くような何か得体の知れないの獣の声が聞こえていた。突然、チョーラ(チョールナの愛称)が叫んだ。
「もうたくさん! 早くお家に帰りたい!」
「チョーラ、落ち着いて、ピオネールはいつでも冷静沈着でいなきゃいけないのよ」ターチャ(ザラターヤの愛称)がなだめた。
「――わかったわ、こうしてわたしたちがピオネールに戻れないのは、誰かが邪魔をしているからよ!」
「何を言ってるの、同志チョーラ?」
「わたしたちを迷わせるよう、どちらかふたりが反乱分子なんだわ!」
「チョーラ、あなた疲れてるのよ。ほら、バナナでも食べるといいわ」
 その時だった。食欲をそそられるバナナの芳醇な香りが惹きつけてしまったのだろうか、巨大な熊が三人の前に現れた。チョーラとターチャは共に逃げ出したのだが、熊がその後を猛烈な速さで走り追いかけた。
「ここはわたしが食い止めるわ、その間に逃げて!」と、ローチャが熊の前に立ちはだかった。まさにソヴィエト的友情の素晴らしい一面だ。しかし、鋼鉄のように強靭な熊は吼え声をあげて、容易にローチャを吹き飛ばした。
「待って、ここは心を開いて接すればきっとわかってくれるわ」と、ローチャは英雄的な粘り強さで立ち上がった。ボルガの白鳥の翼のように両手を開いて熊を迎えた。しかしまたもやローチャは吹き飛ばされてしまった。
「きっと三人で力を合わせれば、この困難な逆境的状況もきっと打破できるはずよ」ローチャ、ターチャ、チョーラは共に手を握り、悪魔的と言っても過言ではない熊に立ち向かったが、やはり吹き飛ばされてしまった。まさに生命の危機的な状態だった。
 その時、熊が何かを踏み抜いた。すると、青い光が辺りを包み、地面が強く揺れた。熊は光に目を潰されて激しく苦悶に暴れた。ロシアの大地が大きく裂け、木々も飲み込まれていった。何が起こったのか分からなかったが、ともかく三人は危機から助かったのだ。
 ヘリが三人の前に降り立った。警察のヘリコプターだ。我らが誇るソ連警察は遭難の通報を受け、その優秀な捜査能力で見事三人の居場所を突き止めたのだ。
 三人はそのままヘリで警察署まで救助された。刑事は三人を牢につながれているある男の前に連れて行った。刑事が言うには、あの青い爆発は反ソヴィエト的思想を持ち、アメリカのスパイである反乱右翼テロリストが仕掛けたもので、それがこの男なのだそうだ。この男について何か知らないか、と刑事は訊いた。三人は誰も知らないと答えたが、牢の扉を開けられた男は何か言おうとした。それをローチャは男を踏み潰して黙らせた。
「さ、さあ、行きましょう」誰が見ても不審な挙動でローチャは帰ろうとした。
「わかった、ローチャが反乱分子のメンバーなんだわ!」愛国精神に溢れるチョーラは学校で習っているカラテのチョップでローチャを倒した。
「後は我々に任せてください」国家保安委員会の将校がローチャを黒塗りの自動車にのせて、去っていった。ローチャはおそらくルビャンカに連行され、愛国的な委員会が陰謀の全貌をきっと解明してくれることだろう。
 だから、子供たちよ。友人の間の結束はまさに何よりも美しいものであるが、その友人が反ソヴィエト的国家の敵だった場合は英雄的な勇気でもって大人(特に政府、党の関係者がよいだろう)に伝えよう。それこそが、ピオネール的な精神であり、真のソヴィエト少年少女の偉大さなのだ。

(更新者:西崎)
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Author:新月お茶の会
東京大学の学生を中心とした文芸サークル新月お茶の会の公式ブログです。会誌『月猫通り』の情報や読書会の様子をお伝えしていきます!
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