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第7回世界文学読書会 レポート

第7回世界文学読書会のレポートをご紹介いたします。現在の会長、後藤檀さんが主催するこの読書会。
なかなかレポートが上がらず苦労しましたが
どうぞゆるりとお読みください。 (文責:FF5)

2月2日、部室にて7回目の世界文学読書会を行いました。今回の課題図書は『存在の耐えられない軽さ』。作者は、チェコ人でフランスに帰化し、フランス語でも多数の創作を行っている作家、ミラン・クンデラです。
この読書会は今年度組織されたもので、評価の確立されている(主に20世紀の)海外文学を読んでいこうというものです。まじめな文学研究の読書会というよりは、楽しく読んでワイワイ無責任に感想を言うことを目的としたものです。今回まで、ポール・オースター(アメリカ合衆国)、イタロ・カルヴィーノ(フランス)、ガッサーン・カナファーニー(パレスチナ)、残雪(中国)、ガブリエル・ガルシア=マルケス(コロンビア)と読んできました。
当日はもうちょい人がいましたが、今回は2人の対談形式に圧縮して読書会の様子をお伝えしましょう。

A:今回はかなりよかった、楽しく読みました。俗い感じがいいですね、ちゃんとロマンスになってて。もうだからポストモダンとかはSFやラノベに任せておけばいいんだよって。ちゃんと物語をやろうよということばっかり考えてます。
B:その話はカナファーニーのときあたりからずっと言ってますよね。僕は筋を追うだけになっちゃって、あんまり楽しくなかったかなあ。ディテールがきちんと読めれば違うのかもしれないけど。
A:冒頭の、何回も繰り返しやってきてフランス人の首をちょんぎるロベスピエールとかの描写がいいんですよね。かわいい。
「歴史上一度だけ登場するロベスピエールと、フランス人の首をはねるために永遠にもどってうるであろうロベスエールとの間には、はかり知れないほどの違いがある。」
B:第四部の、傘をもってぶつかってくる女たちにロシア人を誘惑する若者を重ねるところとかも描写がいいんですよね。
A:そのへんのディテールは訳によってかなり異なってますね。今回は文庫版の訳で読んできた人と河出の世界文学全集の訳で読んできた人がいました。文庫版はチェコ語からの訳で、世界文学全集のほうは著者自身の全面的な見直しのもとフランス語で出版されたテクストを底本とした訳になってます(このこと自体も亡命作家の自己翻訳という大きなテーマをはらんだ問題ではあるのですが)。細部を考えなければ、文庫のほうがやわらかくてかっこいい文章で、河出のほうはちょっと堅いかなという印象。
B:僕が特に好きなのは、フランツがカンボジアの<大行進>に繰り出すところ。フォトグラファーが地雷を踏んで死んじゃうんですよね。河出の訳だとこんな感じです。
「彼は稲田をするすると後ずさりに走りだし、その途中で地雷を踏んづけてしまった。爆発が起こって、ずたずたになった彼の死体がバラバラと飛び散り、国際的インテリゲンチャたちに血の俄雨を振りかけた。(中略)彼らは自分たちが担っている旗が血で聖化されたのだと考え奇妙な誇らしさをおぼえる。ふたりはふたたび歩きだした」
これを読んで、あ、ここは全然リアルじゃないんだなって気づく仕組みです。
A:テレザがトマーシュの命令でペトシーンの丘に行くと、自殺志願者たちが処刑されてるシーンとかもそうなんですよね。基本はリアリズムではあるんだけど、あきらかにそうじゃないなっていう描写もある。
B:この作品では夢のエピソードとかも逐一重要になってきて、それが現実に対して重奏性を持ってきますよね。
A:そう、全部に意味を読ませるようなつくりになっていて、そこはやっぱりヨーロッパの小説だなあと。
B:ベタに精神分析っぽい。
A:これがガルシア=マルケスとかマジックリアリズムだと、そうはならない。「誰々が空を飛んだ」へぇー。「雨が何年も降り続けた」そうなんだーってそれで終わっちゃうんだけど、それがすごいという。
B:キャラクターでいうと誰が好きですか?2部の冒頭では、「トマーシュは『一度はものの数に入らない』という格言から生まれ、テレザは彼女の腹鳴から生まれた」と作者自身が明かしていますが、僕はこのテレザのエピソードがなんとも言えず好きです。トマーシュの家に来たときお腹が鳴ってしまって恥ずかしかったんだけど、そのままセックスをして、そのまま高熱を出してやっかいになるという。このように、格言や小エピソードからキャラを作るというのは、西尾維新的唯名論にもちょっと近いのかなとおもいました。
A:西尾は本当に名前=キャラのことしか考えていない気がしますが、この人はふつうに小さいところから人間を演繹できるという立場だとおもうけどね。ただ、属性とかでキャラを作ってはならないというのは本当にそうですね。「ツンデレをこう新しく変形させてこういうキャラを作ろう」とか、そう考えるのは本当に意味がないという。3部の、サビナとフランツの感じとかが好きです。
B:ある言葉についてのディスコミュニケーションをずっと列挙している奴ですね。こういう断片性は確かにかっこいい。『存在の耐えられない軽さ』というタイトルはサビナの言動にもっとも大きくかかっているというところがありますが、このサビナはとてもいいですね。とてもクレバーな女性で、テレザのような「重い子」性から遠ざかって軽やかさを求め、最終的にはチェコからどんどん遠ざかってカリフォルニアまで行ってしまう。池澤夏樹は解説の中で、サビナ的な生が実現されるのがアメリカというのは変なんじゃないと言っていますが。
A:あとフランツの純粋さはなんなんだろうね。ずっと心なかのサビナを基準にして行動しているという。
B:フランツはキモい!(笑)ただ、最終的には<大行進>のキッチュさにも自覚的であるというのが悲しいところですね。
A:そのキッチュというのはわからなかったよね。いや、言わんとしていることはわかんなくはない気もするんだけど、そんなことさらに糾弾することなの?キッチュはなんなんでしょう。「アイドルはうんこしない」みたいなことですか?(笑)
B:お墓に「彼は地上に神の王国を望んでいた」みたいな雑なエピタフ書かれちゃうこととかでしょ?(笑)
A:あそことか、フランツの奥さんのマリー=クロードがフランツの人生について雑にまとめるところとかね。
B:「キッチュ」のほかにも哲学のテーマは本作ひとつの中心を成してますね。大きなところでは、重さ/軽さという対立と永劫回帰思想です。人生は1回きりなので選択については正当化できない、永劫回帰じゃないんだよという議論はヒュームの帰納の懐疑のこととかを思い出したりしました。まったく同じ条件というのは2度と現れることはないのだから、帰納法を正当化することはできないという。それから、デカルト的心身二元論もひとつのモチーフになっています。テレザが不貞を働くところで、これは心ではなく体を受け渡しているだけだから大丈夫なんだと思いこむところがあって、あー近代だなあみたいな。
A:性/愛の分離というモチーフは、ロマンスのメソッドとしてありというか、ひとつの王道はあるけど。スマートかどうかは別として。
B:トマーシュみたいなドン・ファン性、奔放な性生活とは別のところに真実の愛があるんだみたいな態度はもう説得的ではない気がします。
A:対してテレザは、大事な場面でお腹が鳴っちゃうというエピソードに現れているとおり、心身一致を体現していると。たいていのラブコメとかは、まあ性愛一致ですよね。
B:しかし処女・占有厨は容易に人間を丸刈りにするわけですよ!(笑)
A:その言い方もどうかと思うけども(笑)
B:ドン・ファン的なトマーシュに対してテレザはたった一度の不貞の夜のことを気にしつづけますね。そして、このことが社会主義体制下での疑心暗鬼とよく接続されています。「一夜をともにしたあの男は実はスパイだったんじゃないか」というところです。
A:ああ、俺の今まで読んできた東側の小説だという感じでとてもいいですね。ほかにも、窓拭き掃除人になってしまったトマーシュのところに役人がやってきていろいろ質問するシーンがありますね。友好を装ってとにかく相手を持ち上げるんだけど、ナチュラルに尋問に移行して署名を要求してくるという。
B:言葉の字面の意味と裏側の意図がまるで一致していないという。社会主義国のリアルなんだろうなあと感じました。
A:突然にSFっぽい想定をしだすところも社会主義圏の作家だなあと感じます。もし、地球の全生命を上に立つ使命をもった宇宙人が現れたら人間はどうなるかとか、現世の記憶をすべて持ち越したうえですべての人間が2度目、3度目の人生を送る第2第3の惑星があったらとか、そういうことを考えるでしょ。それと、都市生活は監視の目が行き届いていてつらいんだけど、農村は素晴らしいところなんだみたいな考えがあるのもロシアだなあと。ロシアじゃないんだけど。
B:確かに7部で田舎に移った後の暮らしはかなり率直に楽園的に描かれている気がします。もちろんテレザはまだトマーシュの愛を疑わなくてはいけないし、カトリーナは弱ってなにもできなくなってしまうし、田舎でもメインモチーフはさまざまな苦悩なんだけど。
A:最後の和解のシーンもいいですね。さびしいんだけれど小さな幸福感があって。
B:そうですね。読んでるときの印象はあまりよくなかったけど、話しているうちに素晴らしい点がたくさん見つかったようなような気がします(笑)

いかがだったでしょうか。次回は、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい生涯』を読みます。今年一年間続けてきたこの読書会も、次回でいったん終了となる予定です。3月16日(土)16:00より行います。
外部の参加者が来ることなど考えもしませんでしたが、もし万が一これを読んで参加したいと思った方がいらっしゃいましたら gottokutyo@gmail.com までご連絡ください。歓迎します。

(文責:後藤檀)

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